その夜。ずっと横になっていたせいかなかなか寝付けず、私は何度もベッドの上で寝返りを打ちながら昼間聞いた幽霊船の話を思い出していた。

(歌声かぁ……エルネストさんも昔はこのレヴールにも歌が溢れてたって言ってたし、だとしたらやっぱりその頃の幽霊……?)

 私は小さく頭を振りながらもう一度寝返りを打った。

(でも、そのエルネストさんだって、もしかしたら……)

 セリーンが昔見たというエルネストさんの絵。もしそれが本当に彼を描いたものだとしたら、もうこの世に存在しない人かもしれないのだ。
 幽霊とは少し違う。でも、すこし正解。……確か、初めて会ったとき彼はそう言っていた。

(やっぱり、エルネストさんは……)

「眠れないのか?」
「!」

 掛けられた声にびっくりしてそちらを見れば、セリーンが心配そうに私を見ていた。