森に銃声が鳴り響く。

両手で抱えていた銃を下ろし、私は倒れている猪に近寄った。

「……そんなに大きくないなぁ……」

私は独り言を呟いて、銃を背負うと歩き始める。

この銃、でかいけど軽いんだよな……。私でも普通に持てるもん。

近くにいた私が普通に乗れるほどの大きな狼、ラルフが猪をくわえた。

「ラルフ、町まで頼んだよ」

私は、ラルフの背中に飛び乗りながら言って、しっかりとラルフを掴む。

その言葉に、ラルフは走り出した。結構速いから、あっという間に町に着くんだ。

「グレーテルさん!」

その声に、私はラルフから飛び降りる。バサリと被っていた赤いフードが脱げた。

「こんにちは。これで、いくらになりますか?」

私は仕留めた猪と、腰に付けてある茶色のポーチから森で採取したものを、万屋の店主のエレナさんに見せる。

その後、ちょっとした会話をして、私はお金を受け取った。といっても、少量だけどね。

「また明日もよろしくね」

「お任せください」

私はそう言って、ラルフに飛び乗る。

「そっちは、恐怖の森の方向だから気を付けてよ」

「分かってますよ。ラルフ!」

ラルフは、森の方へと走り始めた。

私は2つ上のお兄ちゃんと、人狼のラルフの三人で、エレナさんが言っていた『恐怖の森』の森の奥で住んでいる。