あっという間に夏が過ぎ、木々が燃えるように色づいた十一月、俺は着慣れない白のタキシードに身を包んでいる。

 隣に立つのは、息を呑むほど美しいウェディングドレス姿の妻。オフショルダーのAラインのドレスは、可憐なデザインでとてもよく似合っている。

 式の準備はだいぶ慌ただしかったが、なんとかこの晴れの日を迎えられた。正直面倒なことも多い結婚式だが、最高に綺麗な伊吹を見られるなら悪くない、と衣裳選びのときから思っている。

 今は厳かなチャペルで、親族と一緒にこれから行われる挙式の簡単なリハーサルをしていたところだ。手術バカと言われる俺が、こんな格好で皆の前で愛を誓うなんて場違いな気がして仕方ない。

 ひとまずリハーサルを無事終えて戻ろうとしているとき、伊吹が彼女の両親に呼び止められた。聞きたいことがあったのか、なにかを話しかけられている。

 両親ふたりが話している最中、伊吹は俺にちらりと目線を向けると、摘まんだ指先を眉間に当てて、手を開きながら下へ軽く下ろした。

 これは〝ごめんね〟を意味する手話で、もう自然に出るようになったらしい。俺も簡単なものなら読み取れる。