梅雨明けが発表された七月中旬、私は相変わらず心穏やかな日々を過ごしている。今度の休みには、久夜さんと候補に挙げている式場を見学しに行く予定だ。

 そういえば、今夜はみなとみらいで花火大会があるんだっけ。マンションからも見えたら、ふたりでゆっくり楽しみたいな。

 仕事を終えた金曜日の夕方、軽く胸を弾ませて病院を出た数分後。歩道に面したコンビニを通りすぎるとき、中から出てきた人をなにげなく見た私は息を呑んだ。

 やや長めのダークな髪、整った顔に鋭い瞳のその人は、重南先輩だったから──。

 視線が合い、心臓がドクンと重い音を奏でる。ふたりして足を止めてしまい、気まずい空気が流れた。

 嘘……こんなところで会うなんて。正直逃げ出したいけれど、久夜さんと深い繋がりがある以上無視するのはよくない、よね。とりあえず挨拶……!


「ど、どうも」
「……ああ」


 ぎこちなく言うと、相変わらず素っ気ないが一応先輩も返してくれた。しかし、それ以上なにか話せるわけでもなく。


「……では」
「……ああ」


 カチコチに固まった身体を折り曲げ、お互いに即行で別れの挨拶をした。