香澄が変わったのはその日からだった。


それまではあたしやコトハを見下すだけだった香澄だけれど、執拗に絡み始めたのだ。


「ねぇ星羅ちゃん。星羅ちゃんはデートの時にどこに行くの?」


休憩時間になると香澄はあたしの机まで移動して来てそう聞いた。


「海の家だけど……」


素直に答えた瞬間、香澄がプッと噴き出した。


「だよねぇ! だってあいつは引きこもりだもん。外でデートなんてできないよね!」


教室中に響き渡る声でそう言い、大声で笑い始める。


香澄の取り巻きたちも、香澄の機嫌を損ねないように同じように笑い始める。


するとあたしの鼓膜は割れんばかりの笑い声に揺らされて、思わず耳を塞ぎたくなった。


「あたしは彼氏と温泉旅行とか行ってるよ」


普段彼氏の話なんてしない香澄があたしを見下ろしてそう言った。


「そうなんだ……」


香澄が彼氏とどんなデートをしようとあたしには関係ない。


そう思って視線を逸らすとその瞬間に「あれ? 嫌味みたいになっちゃったかな? ごめんね」と、含み笑いを見せる。