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傍にいた人が遠くなる。

口では期待してないと言って、頭ではそういう人だからと割り切って、結局、瞳ではその後ろ姿を追っている。

そんな経験は父に対してだけで十分で。嫌というほど寂しさを味わったはずなのに、きみに傍にいてほしいと思ってしまう。

夜が長く感じる日は、余計に。


客の入りが少なくて、いつもより早くバイトが終わった。学校では荷物になるからと遠慮していたお土産を渡すために、私は冨山さんの部屋に少しだけ上がっていた。

「ありがとう! チョコレートだ!」

「うん。色々迷ったんだけど無難なものが間違いないかなって。あとで女将さんにも渡してくれる?」

「うん。わかった。それで、遊園地って誰といったの?」

私は瞬きをしながら、口ごもってしまった。

遊びに行った報告はしてないけれど、お土産のパッケージにはしっかり〝遊園地〟と書いてある。

「ひょっとして、藤枝くん?」

私は否定することもなく、コクリと頷いた。

「ずっと聞こうか迷ってたんだけど、付き合ってるの?」

「……ううん」

「そっか。藤枝くんって中学の時からモテてたけど、告白してもみんなフラれてたな」

「……中学の晃ってどんな感じだったの?」

「今と変わらないよ。どこにいても目立つから同級生からは一目置かれてたし、たまに昼頃に登校してきても、なぜか担任からは怒られてなかったよ」

手がかかるほど可愛いというやつだろうか。そういえば晃のクラスの澤村先生もどことなく彼だけには甘い気もする。