「由姫」



 低音なのにどこか優しさのある声に、名前を呼ばれる。

 酷く心地いいその声に、ゆっくりと意識が戻っていく。



「んん……」



 あれ……?

 重たい頭をあげると、視界に映ったのは、優しい眼差しでこちらを見ている滝先輩だった。



「たき、せんぱい……?」

「そろそろ帰ろう」

「え……?」



 そろそろ、帰ろうって……ここ、どこ?

 ぼんやりとする意識の中、辺りを見渡す。

 生徒会室……?

 ハッとして、微睡みから一瞬で抜け出した。