それから私たちは前と同じ……いや、前よりも幸せな生活を送ることになった。


相変わらず黒澤くんは甘いけど、でも……前よりも甘やかされてるような気がする。


「お弁当、俺が食べさせてあげようか? 大丈夫? 怪我痛いよね?」


その日のお昼休み、幸せのあまりぼーっとして食べるスピードがゆるむ私の顔を心配そうに覗き込む。


「だ、大丈夫だよ! 膝の怪我なんて大したことじゃ……」


膝を怪我してお弁当食べられないってそんなの聞いたことないよ。


「いいや! 俺の大事な羽音が怪我だなんて……はぁ。その場にいられなくてごめんね?」


「心配しすぎだよ〜……」


すり傷なんてドジだから昔から何回も経験してる。
それに大した傷じゃないもん。
少しすりむいただけ。


「俺、本当に羽音のことは今まで以上に大事にしたいから……」


「……ありがとう」


少し熱くなった顔を見られないように、俯いて大好きなお母さんのたまご焼きを頬張る。