――次の日の朝。


「おはよ、羽音」


「おはよー」


机にカバンを置いて教室を出ようとしたら、初花に呼び止められる。


「ねぇ、聞いてよ」


「ん? どうしたの?」


「あの、羽音がぶつかった先輩いるじゃん? 神楽先輩!」


「う、うん」


神楽先輩の名前を聞いた瞬間、ドキッとする。


そして初花は近くに人がいないのを確認して、耳打ちしてくる。


「神楽先輩って、美人キラーらしいよ。この学校の可愛い女の子はみんな神楽先輩に手出されてるんだって」


「えっ!?」


昨日の図書室でのことを思い出す。


……ダメダメ!
あんなの思い出したくないよ。
忘れるんだ、私!


「だから、羽音も気をつけなよ〜」


「わ、私は大丈夫だよ」


「羽音は可愛いから心配なの!」


「あ、ありがとう……」


昨日、その現場を見てしまったなんて絶対に言えない。
お墓まで持っていくしかない。


「羽音、どこいくの?」


「ちょ、ちょっと図書室に……」


「そっか、いってらっしゃい」


今日こそはスマホをゲットしないと……!


気を取り直して教室を出発する。


あんまりスマホは使わない方だけど、ないと困る。