帰るのが怖い『竜宮城』…?

「……こっちか」

 どうやら大地は、紺野君の本についている匂いをたよりに、彼の家を探し出そうとしてくれている様だ。

「後で話すよ。…ほら、多分あそこだ、コンノの家」

 緑色の屋根の家を、大地は顎で指した。

 私は地面に降ろしてもらうと、緊張しながらその家のインターホンを押した。

 ドアが開き、中から眼鏡をかけた紺野君が顔を見せた。

「委員長?」

 彼は私を見て、とても驚いた表情を見せた。

「どうしてここが…?」

 私はどう返事していいかわからなくなり、しどろもどろになりながら返事をした。

「急にごめんね!…この本を返したくて、紺野君の家探しちゃった」

 私は紺野君に、ずっと借りていた本を返した。

「これ、どうもありがとう。読みやすくて面白かった」

「…うん、素直に読める内容だから君に合うと思って。読みづらい本は、苦手そうだったし」

 いきなり、人間の姿に戻った大地が会話に割り込んできた。

「さくらは今も、イインチョって呼ばれてんのか」

「あ!…まさか…大地?」

 紺野君はまた、仰天した表情を見せた。

「よ。久しぶりだなコンノ」

 まるでムンクの『叫び』に描かれた人物みたいに紺野君は、口を開けて大地を見つめている。

「…びっくりした。いつも夏祭りの時にしかいないのに、どうして?」


「さくらに会いに来た」