「この前は、すまなかった。感謝してる。」
沈黙を破り話を始めたのは高辻だった。
「いいえ。無事でよかったです。」
莉緒が高辻の方を見ないまま返事をすると、高辻が自分の持ってきたカバンから何かを出した。
「これ、息子にカーディガン着せてくれてただろ?そのお礼というか・・・」
向かい合わせで座るテーブルの中央に高辻はきれいに包装された長方形の箱を置いた。
「なんですか?」
「・・・手帳だ。」
「手帳?」
「そう。よく、リサーチした店を手帳にまとめていただろう?」
「・・・」
高辻と一緒に回った店も手帳にたくさん書かれている。

「よく覚えていますね」
「当たり前だろ」
莉緒の言葉に高辻が間髪入れずに返事をした。

莉緒はそんな高辻に少し微笑んでから、目の前のブラックコーヒーを一口飲んだ。