「羽衣―! 購買つきあって!」


お昼休み、

いつものように
朝歌や叶奈ちゃんたちと
購買に向かっていると、

ジャージ姿の一ノ瀬くんとすれ違った。


そっか、
一ノ瀬くん、昼練もあるんだ。


いつも眠そうにしてるのは、
練習のせいなんだ。


すると、
朝歌と叶奈ちゃんの弾んだ声が響く。


「やっぱりユニフォーム姿の
一ノ瀬くんは格別だよねっ」


「見て! あの整った横顔っ!」


「凛々しいっ! 美しい!」


廊下では、一ノ瀬くんを見ようと、
あちらこちらから

女の子が集まってくる。


187センチの長身、
端正な顔だちにきりっとした表情、
アーモンド形の瞳に宿る強い光。


ピンと背筋を伸ばして
まっすぐに前を見つめている
一ノ瀬くんの顔には、

少しの緊張感が漂っていて、

その凛とした姿は、
たしかにカッコイイ。


窓のない暗い廊下にいるのに、
一ノ瀬くんだけ
キラキラと輝いて見える。


「こうして見ると、
一ノ瀬くんのオーラ半端ないね」


「私たち、
すごい人と同じクラスなんだね」


朝歌と叶奈ちゃんの会話に
コクコクとうなづく。


教室にいるときの、

ぼんやりと眠そうにしている
一ノ瀬くんとは、

ちょっと違う。


一ノ瀬くんの後ろ姿を
なんとなくみんなで眺めるていと、

一ノ瀬くんが体育館に入った途端、
凄まじい歓声が響いてきた。


「あの歓声って?」


びっくりしてたずねると、
朝歌が肩をすくめて教えてくれた。


「一ノ瀬くんのファンの子たち」


「ちらっと覗いたことがあるけど、
アイドルのコンサート状態だよ」


「あんな状態で練習できるのかな?」


なんだか一ノ瀬くんも大変だ……


一ノ瀬くんが、
練習を見に来てほしくなさそうにしていた理由が少しだけ分かった気がした。