【一ノ瀬side】

部活を終えて、
教室に戻る途中に、

サッカー部の鷹島とすれ違った。


「あのさ、あんた、
ホントに羽衣とつきあってんの?」


視線を尖らせて睨みつけてきた鷹島から
視線をそらさずに

まっすぐに答える。


「もう、
天野をあんな目には合わせない。
俺が、天野を守ります」


天野と鷹島がどんな関係か分からない。

けれど、鷹島も天野のことを、
大事にしてるのだけは、わかる。


「天野に付き添ったり、

天野のこと、
気にかけてくれてありがとうございました。

俺じゃ、できないことだったから」


天野の入院中に、
学校を休んでまで
鷹島が天野に付き添っていたのは

入院中の天野が危険な目にあわないように
見張るためだったんだと、今ならわかる。

そのために、
大切なユースの合宿を欠席していたことを
サッカー部の知り合いから聞いた。


「へえ、なにそれ、彼氏の自信?
俺の天野、みたいな?

まだ、名前で呼ばせてもらえないのに?
お前、ホント可哀そうな奴」


……ムカつく。

どうして、鷹島は俺にだけ
こんな態度なんだ?


すると、鷹島がにやりと笑う。


「小さい頃から、羽衣は可愛かったよ。
ホント、天使だったなー。

風呂も一緒に入ったしなー(リラと羽衣が)。
同じベッドで
朝まで一緒に寝てたよなー(リラと羽衣が)」


顔面蒼白になっている俺を
チラリとみると、

意地悪く鷹島が口をひらく。


「『羽衣』によろしくな、『一ノ瀬くん』。

一ノ瀬が嫌になったら、いつでも俺のところに
来いって、『羽衣』に伝えておけよ。

くくくっ」


肩をゆらして笑いながら
鷹島が去っていくと、

そのまま天野のもとまで駆けつけた。