【羽衣 side 】

翌日、朝のホームルームが始まる前に

朝歌と叶奈ちゃんに、
一ノ瀬くんとつきあうことになったと
報告した。


「かなり、びっくりしたけど!

言われてみれば
思い当たることだらけっていうか!

いや、でも、ものすごく
驚いてはいるけど!」


朝歌が、
目を大きく見開く。


「たしかに、一ノ瀬くんって
羽衣ちゃんのこと、よく見てたよねっ。

授業中とか
廊下でみんなで話してるときとか!」


叶奈ちゃんの言葉に、
朝歌がうんうんと、大きくうなづく。


「そういえば下駄箱で、

一ノ瀬くんがやたら羽衣に近づいて
話してたことがあったよね!

おかしいな、とは思ってたけど!」



「花壇で一ノ瀬くんが羽衣ちゃんのことを
抱きしめてたっていうのも

あれは、噂じゃなかったんだね!」


興奮している朝歌と叶奈ちゃんを前に
動きを止める。


……花壇?


叶奈ちゃんのその言葉に、

あの日の一ノ瀬くんの声が
よみがえる。


『天野、眠い』


そう、

あのとき、ぐらりと倒れ掛かった私を
一ノ瀬くんが支えてくれたんだ。

そしたら、
後ろから一ノ瀬くんが……


ふっと浮かんできたその光景に
顔がかあっと熱くなる。


「羽衣、顔、真っ赤だけど大丈夫?」

「あ、う、うん!」

「そっかぁ、羽衣、一ノ瀬くんのことが
好きだったんだね」


しみじみとつぶやく朝歌に
ぽつりと零す。


「朝歌と叶奈ちゃんに
ずっと聞いてほしかったの。

『一ノ瀬くんのこと好きになった」』って」


すると今度は、朝歌が動きを止める。


「もしかすると、あのお祭りの日に
羽衣が言ってた『聞いてほしいこと』って、
一ノ瀬くんのことだったのかな?」