家の前で、私は十分近く立ち止まっている。冬の風が体に当たって、凍えてしまいそうなほど寒い。でもここ数日は、家に入るのを躊躇ってしまう。

勇気を出して、ガチャリとドアを開けた。前までは家に入るたびに「ただいま〜!」と元気に言っていたけど、最近は無言で部屋へと向かう。

私の部屋に向かうには、リビングを通らなければならない。リビングの前を通ると、ドアが開いていてふわふわのくせっ毛の頭が見えた。私は目をそらし、部屋に入る。

私は彼氏の達也(たつや)くんと同棲している。普段は仲良しなカップルだと思うんだけど、今はケンカ中だ。

ケンカの原因は、ほんの些細なこと。達也くんが脱いだ靴下や衣服を床に散らかすからそれを注意したら……という感じ。もう一週間近く互いに避けて生活している。

達也くんはご飯はずっと外食しているし、お風呂も銭湯に行っていて、この家には眠るためだけにいるって感じ。なんだか話す気にもなれない。