SIDE 壱華



「おかえりなせえ」



本家の門を志勇とくぐる。



「ただいま」



出迎えてくれた本家の組員さんに声をかける。


6月中旬、わたしは本家に帰ってきた。



「おかえりなさい、壱華ちゃん」

「おかえりなさいませ、壱華様」



玄関では司水さんと、なんとお母さんが待っていてくれていた。



「お母さん」

「もう、待ちくたびれて出てきちゃったわ。
でも今日は移動して疲れたでしょうからゆっくりしてね」

「またお世話になります。はい、お言葉に甘えさせていただくつもりですけど、その前に……」



志勇の手を借りて玄関に上がる。


視線を絡ませると、勝手にしろと言いたげに短くため息をついた。


帰ってきて早々嫉妬心を燃やす彼に苦笑して、わたしはお母さんと向かい合った。



「会ってもらいたい人がいるんです」