SIDE 志勇



さらさらと春風に吹かれる長い黒髪。


俺を魅了して止まない、純粋な黒で彩られた瞳。


白い肌、凛とした声、紅潮する頬、一度触れると離したくなくなる、甘い唇。


その全てが、俺のもの。


1年かけて、ようやく壱華を手に入れた。


荒瀬は壱華を勝ちとった。




それからはとんとん拍子に事が進み、3月の初めには婚姻届を提出、その2週間後に盛大な式を挙げた。


そうして壱華は俺の名字を名乗るようになった。


荒瀬壱華。……いい響きだ。



4月には休暇をとって、柄じゃないがハネムーンでも行こうかと、壱華と計画していた。


そんな、清々しく晴れた朝のこと。