完全に油断していた。


わたしは、妊娠というものを軽く見てしまっていた。






「はぁ、はぁ……うっ」



嗚咽と一緒に胃液が上がってくる。


もう胃は空っぽなのに、弱った体は残った胃液ですら異物と判断してしまうのか。


堪らず、苦くて酸い液体を、駆け込んだキッチンの流しに吐き出した。




「はぁ……」



妊娠7週5日目。


志勇のいない本家の離れに、わたしの荒い息遣いとため息が広がっていく。


ちょうど7周目に入った頃だ。微熱、倦怠感に加えて吐き気を催すつわりが始まったのは。


今では食べ物は戻してしまうし、水を飲んでも吐くようになってしまった。


どうやらわたしは、とても重たいタイプのつわりらしい。