ジリリリリ、と鳴り響く目覚ましで透は目を覚ます。ぼんやりとした頭で目覚ましを止め、もう少しだけ寝ようとすると「起きろ!」と頭を叩かれた。

「うっ……。って宍戸また部屋に勝手に……!」

痛む頭を押さえる透を、ベッドの脇に立った玲奈が冷ややかな目で見つめる。

「起きて来ないお前が悪い」

寄生虫学者の助手になり、数週間。透は未だに仕事に慣れていなかった。

朝は五時に叩き起こされ、一日中動物の世話をしたり、玲奈にコーヒーを持って行ったりする。動物は犬や猫ならまだいい。グロテスクな見た目をした虫の世話までさせられ、透は悲鳴を堪えながら仕事をしている。

「私は植物に水をやる。お前は犬を散歩に連れて行け」

「……わかってるよ」

透は玲奈や美咲に最初のうちは敬語を使っていたものの、「三つしかどうせ歳は変わらないのだから」と美咲に言われて敬語はなくなった。

「行くぞ〜!」

研究所に飼われている犬は、六頭もいる。それを一斉に透は散歩に連れ出す。ひやりと外の空気は冷たかった。