私が、サーフウィカ王国の離宮にお世話になって、半年が過ぎました。

本当にあっという間の半年でした。
フレア様や離宮の方々は、とても良い方達ばかりで、今迄の辛い日々が夢のような感じです。

身体中の傷もやはり、手足と同じ様に綺麗に消えていました。
フレア様が妖精の泉と呼んでいたあの水は、やはりとても不思議な物だったのでしょう。

あの後直ぐにフレア様は、私の為に家庭教師の先生を付けてくれたのです。
私は、色んな国々の事や礼儀作法や楽器の演奏等を、教わっています。
皆様には感謝しています…いつか御返しできる日が、来ればと思っています。

シリスさんが、色々出来ると言っていた事なのですが、この半年で試してみたのです。
先ずは動物達の声です、あれから小鳥さん達のさえずりがキチンと訳されて聞こえます、先程も。



(だい3おうじのミシェルが、いまりんこくに、りゅうがくちゅうのソフィアちゃんに、こくはくしたんだって)

(えーあんなに、あまあまだったのに!まだつきあってなかったの?)

(ミシェルは、おくてなんだよ)

(((へんじは?)))

(こんやくしゃになったってよ)

(((やったぁー)))

(ミシェルはくろうしてたからな、むくわれたな)



そんな感じで、小鳥さん達の会話が勝手に頭に入って来るので…私はかなりの、情報通になりました。誰にも言いませんよ!私的な事ばかりですからね。

後は…未だ何も判らないのです…
レオン様も偶に様子を見に来てくれるので、その時シリスさんに聞いても。


(じぶんでみつけないと、いみないからだめよ)


って言われました。
今、色々試してはいます…後は、嬉しい事に半年で身体がとても成長したのです。
たっぷりの睡眠と栄養バランスの良いご飯で、ずんずん大きくなったんですよ。皆さんは、やっと年相応に見えるねって喜んでくれました。

テラスの椅子に座って、鳥達の話を楽しく聞いていたら、鳥達からフルートが聴きたいと催促があったので、いつも遊んでくれる御礼に…と言えるほど上手では無いのだけれど、心だけはしっかり込めて吹いていた時、扉が軽くトントン叩かれたので、一旦止めて良いですよと、言葉を返しました。

レオン様がいつもの気高い雰囲気で入ってきました。
最初は私も軽くパニックになっていたので気付かなかったのですが、改めて見るとレオン様はフレア様同様に、気高く高貴な感じが醸し出されています。


「レイファおはよう。
とても綺麗な音が出ている。離宮中が優しい空気に包まれている様だ。
皆も、風に乗って聞こえて来る君の音に、笑顔になるらしく楽しそうに仕事をしていたよ」

「レオン様、おはようございます。
今日は来る予定でしたか?それもこんなに早くからなんて」

「母上に用があってな。それにレイファにも渡す物があるんだ」


レオン様が綺麗な封筒を私に渡してくれました。
よく見ると王宮の紋章が!表には私の名前?レイファの後の名前が?


「レオン様?エバニスとは?」


レオン様は、私の近く迄歩いて来て通り越して、テラスに凭れ空を見上げ。


「エバニスとは母上の名前だ。
エバニス家は公爵家でな、今は母上の兄君が公爵として継いでいるよ。
そちらにはキチンと話をしてあるから、遠慮なく名前を名乗ると良い。
エバニス公爵家には昨年結婚した息子と、未婚の娘が1人いるけれども、気にしなくて良い。
母上や私とはあまり良い間柄ではないからな向こうからも来る事は無いだろう」

「そうですか、私も以前の名前は名乗りたく無いので助かります。で?このお手紙は?」

「まあ、開けてみろ」

「はい!」


綺麗な封筒をペーパーナイフでスッと開けると、中には便箋が一枚あり中を読んで見ると…………



「む、無理です」

「大丈夫だろ。ダンスのレッスンの教師からも、なかなかセンスがあると聞いているが」

「服も無いですし…」

「私が用意した」

「えっ、えっと……怖いです…人が多い場所は、きっと…私駄目なんです」

「大丈夫だから、私が迎えに来て側に居るから安心しろ」


レオン様の言葉に何も返せなくて…本当に人間は未だ怖くて。
離宮の方々は大丈夫ですが、他の人は……困っていたら。


鳥達が、空から沢山近づいて来て私の周りに降り立ち、まるで私を護る様に囲いました。

私は固まってしまい、どうしたら良いのか?この状況は?


「君達。私はレイファの事を追い詰めた訳では無いよ…
城の舞踏会に一緒に参加して欲しいだけなのだよ。駄目か?離宮に連れ帰るまで、私が護ると約束しよう!」


レオン様の言葉に、鳥達は一声づつ鳴いて空に帰って行きました。
何だったのですか?レオン様は納得したみたいに、うなづいていますが。

私は何も返事しておりません。

レオン様は、私の家庭教師の先生が入って来られると笑顔で帰って行かれました。
レオン様の自然の笑顔の威力に私は何も言えず終いでした……。