お昼休み。
 羽未(うみ)たちはいつものリラクセーションルームで鬱蒼とした偽物の緑に囲まれ、お茶を飲んでいた。

 スマホをいじっていた阿佐子(あさこ)が叫ぶ。

「やだっ。
 今送ったの、うさこになってたっ。

 私、うさこに改名したいわっ。
 そしたら、きっとちやほやされるー!」

「女子にな」
と言って、芳賀(はが)が阿佐子の後ろを通り過ぎていった。

 ははは、と笑い、芳賀の方を見た羽未だったが、リラクゼーションルームの入り口を見て、びくりとする。

 壁から半身だけ覗けて、夫、春成帯刀(はるな たてわき)がこちらを見ていたのだ。

 誰を尾行してるんですか、刑事さんっ、という雰囲気だったが、目が合うと、手招きされたので、尾行されていたのは自分だったのだろう。

 阿佐子が芳賀にかしましく言い返している横を通って、羽未は帯刀の許に行く。