「ガッキー財布忘れたあ」

「何でよ」

「解んない…」






………同じ学科だったのか…………。



次の日の昼休み、昼ごはんを買いに大学構内のコンビニに行こうと席を立ち、講義室後ろのドアに向かって歩き始めた時だった。


そのドア付近の席に、見知った顔を見つけた。



「近いんだから取りに帰ったらいいじゃん」

「ヤダ遠い」

「徒歩5分圏内でしょ何言ってんの」

「あ、昨日の人」


「!」


目が合った。



「…あ、早瀬の友達」

彼女の視線を追った天音さんも、僕に気づいた。



「こんにちは」

「ねーガッキーおなか空いたー」

「財布取ってきなよ待っててあげるから」

「ヤダ遠い」

「天音メシ行こー」

僕の後ろから、早瀬が天音さんに声を掛けた。



「えー待って、ほのかが駄々こねる」

「どしたん」

「財布忘れたからお昼買えないって、私に(たか)ってくる」

「えー、何で忘れたの?」

「解んない…」


早瀬も天音さんも揃って眉を下げる。



「…あの、じゃあ、僕が買いましょうか? 彼女の昼ごはん」