自分で言うのもおかしいけど、俺はつくづく恋愛に向いていない人間だと思う。


「ねえ、私たちって付き合ってるんだよね?」

ベッドの上にちょこんと座っている彼女は、先ほどまで(あらわ)になっていた身体を隠すように薄いタオルケットを胸に当てていた。


「付き合ってないけど、なんでそんなこと聞くの?」

余韻に浸っている彼女とは真逆に、俺は脱ぎ捨てたワイシャツに腕を通す。

熱くなっていた身体にはちょうどいいと感じるほど、制服はひんやりとしていた。


「だってそういうつもりだから橋本(はしもと)くんは私としてくれたんじゃないの?」

「え、違うけど」


答える頃には彼女の家に来たとおりの格好に戻り、ネクタイまできちんと締めていた。

スマホを確認すると、時計は午後七時になろうとしている。別に計っていたわけじゃないけど、それは自分の都合どおりの時間だった。


「なにそれ。じゃあ、私とは遊びでしたの?」

電気がついていない部屋でもわかるくらい彼女は怖い顔をしていた。

こういう展開になるのはもう何度目だろう。

怒っている女子になにを言っても逆効果になるだけ。繰り返しているうちに俺は嫌というほどそれを学んでいた。


「俺の連絡先は消していいよ。付き合えないならもう俺に会いたくもないだろ?」

優しく言ったつもりだった。けれど彼女の逆鱗に触れてしまったようで、パンッ!と思いきり頬を叩かれた。


「最低!死ね!」

ひくひくと泣いてしまった彼女を置いて、俺は静かに部屋を出た。