***
今日は朝からうかれていてすこぶる機嫌が良かった。

一時間後には俺の隣の席には毎朝眺めていた彼女がいる。

気を引きしめていないと俺の頬は自然と緩んでしまう。

「おはようございます」

「おはよう、たく」

いつもの駅から乗ってきたたくが押し潰されないように、今朝は彼女の代わりに俺が壁になる。


「今日はなっちゃん開校記念日でお休みですよ」

「ふーん、今日開校記念日なんだ」

「…会えないのにずいぶん嬉しそうですね…」

「あー、うん…。
後で会えるんだ彼女に」

「えっ!?どうしてっ!ずるいよ祥平!」

「ははっ。いーだろぉ。
でもたくのほうが毎朝楽しそうにしゃべってんじゃん。
俺なんか今日初めて話すんだからな。
あー、マジ緊張する…」

「ふーん…。
言っときますけど、なっちゃん彼氏はいないけど好きな人はいるから!」

「はっ!?ちょっとまて!
何だよそれっ!そんな話聞いてないぞたく!」

「うん、教えなかったもん、祥平には」

たくが小学生のくせににんまりと俺をバカにしたように笑った。