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「ただいま」

「おかえりっ!」

玄関に入るとリビングから飛び出してきた美月が、勢いよく私にとびついてきた。

「お菓子、すっごく喜んでくれたよ!」

「…そっか。
良かったね、美月」

嬉しそうにはしゃぐ美月に、胸がズキンと痛くなる。

美月と服部くんが仲良く話している姿が頭に浮かび、ますます胸が苦しい。

美月は一瞬言葉につまった私の様子に構いなしで、手を掴むとはしゃぎながら

「菜月!
クラスの座席表作ったの!
説明するから私の部屋に行こう」
とぐいぐい腕を引っ張った。

「えっ…?
ちょっと美月…」

「来週入れ替わるんでしょ?
球技大会だし、沙弓にだけは菜月が来ること話すよ?
いい?」

美月は手作りの座席表とクラスの集合写真をテーブルに並べて私に指差し説明し始めた。