「椿」
その声に椿が顔をあげる。

そこには海が立っていた。


椿の母は椿にさんざん怒鳴り散らしてから帰って行った。

母の後ろ姿を見つめながら涙する椿の肩を抱きながら海が荷造りをするようにと部屋に戻る。
凌駕は椿が抱えているものの大きさに、自分には椿を支え切れるだろうかと不安になっていた。それでも、椿を放ってはおけない。

心から椿に笑ってほしい。

簡単に荷造りをしてから3人は海の家に向かった。
海は香菜と一緒に暮らしていたマンションにそのまま住んでいる。
まだ香菜の物もそのままになっているものも多い。

ひとまず、椿には客間、海は寝室、凌駕はリビングでその日は眠ることにした。