「ひ、姫莉ちゃん」
「……」
「ご、ごめんなさい」
「……」



激おこです。



理由は簡単、俺。


昨日、ナンパしてるのをバイト帰りの姫莉ちゃんに見られて、それから全然口聞いてくれない。


…いや、当たり前なんだけどさ。
可愛い女の子見つけたら声かけるっていう、姫莉ちゃんと付き合う前のクセが抜けなくて、つい。
よくないことはわかってるんだよ。
だから最近はめちゃくちゃ意識して、ナンパとか絶対しないようにしてたのに、気を抜いてたら…。


夏休みも明けて、学校も始まり。
俺のバイト期も終わって、姫莉ちゃんも三つ編みメガネに戻った。


で、あの優しい姫莉ちゃんが、やたら俺のことを無視するもんだから、周りのみんなもざわざわ。
みんな可愛いことは忘れてないだろうけど、どうしてもあの黒いオーラに近づけない様子。


「姫莉ちゃん、」
「話しかけないで」


ピキッと、俺の空気、どころか教室中の空気が凍りついた。
メガネの奥の鋭い瞳が俺をとらえる。