俺の生活は、元の道に戻り始めた。


朝、ホテルのベッドで目覚めて、チェックアウトして、バイトして、ちょっと気まずいけど姫莉ちゃんと顔を合わせて、でもまぁ、日が落ちたらナンパして、みたいな。


そーゆー道に。


今まで、あれだけ幸せだったあの時間は、もうなにも満たされないものになってしまっているけど。


…多分、今更ながら俺、自分の気持ちに気づいたんだよね?いっつも、遅いんだよ、こーゆーの。


好きなんだよ、多分。
多分っていうか…うん、まぁ。


わかんないけど、この気持ちがさ、好きとかそーゆーのなのかわかんないけどね。


あの日の話が愛おしく感じてしまった俺は、わりと重症だったりするのかもしれない。


だけどね、どーしようもないんだよ。
だって、姫莉ちゃんがイヤイヤ期なんだもん。


『弓弦、聞いてる?』
「あ、うん。聞いてる、澄珈迎えにいけばいいんでしょ?」


そうだった、バイト先の控え室、兄貴と電話中だった。