「我々も、ここに居させて頂きたいのですが…。」
と、悌二郎は言った。

「こ、ここに!?」
まなみは、目を丸くした。

「……。」
なつきは黙って幽霊達を見ていた。

「ど、どうする…?」
まなみはなつきを見た。

「う、うーん…。」
なつきも、まなみを見た。

「ま、先ずは…。」
まなみは携帯を取り出し、
「不動産屋に言ってみるね…。」
と言った。

「そ、そうね…。」
なつきは頷いた。


まなみは、不動産屋に電話をした。

『お電話ありがとうございます。高日不動産です。』
と、高田が電話に出た。

「もしもし、《Tigre blanco》に入居した松平の友人ですけど。」
と、まなみは言った。

『どうも、この度はありがとうございます。』
と、高田は答えた。

「この部屋…。」
まなみは少し間を置いて、
「幽霊がいるんですけど…。」
と言った。

『あ、出ました?』
高田はたいして驚いていない様子で、
『じゃ、出るんだね…。』
と言った。

「え、知ってるんですか?」
とまなみは訊いた。

『えぇ、前に住んでた住人さんからは聞いてます。』
高田は、当たり前のように答えた。

「え?」
まなみは驚いて、
「それって告知事項じゃないんですか?」
と訊いた。

『いいえ、あの部屋で人は亡くなったりしてないので、心理的瑕疵物件(しんりてきかしぶっけん)ではないんですよ。』
と、高田は答えた。

━━心理的瑕疵物件とは、その建物内で事件・事故・病死・自殺などで、人が亡くなっている場合など、他人があまり良い気持ちのしない状況の物件の事である。
ちなみに、雨漏りするなどの構造上の欠陥は、物理的瑕疵物件(ぶつりてきかしぶっけん)という。

「で、でも…。」
とまなみは納得出来ない様子。

『そもそも、幽霊は見える人と見えない人がいますし…。』
と、高田は言った。

「そ、それは…。」
とまなみは、言葉を失った。

そして、まなみは幾つか言葉を交わしたあと、電話を切った。

「なつき、どうしよう?」
と、まなみはなつきを見た。

「ちょっと、怖いけど…。」
なつきは幽霊達を見て、
「悪い霊ではなさそうだし…。」
と言った。

「ここに住むの?」
と、まなみが訊いた。

「うん。」
なつきは頷いた。

「じゃ、幽霊付き物件に住むの?」
と、まなみは訊いた。

「うん。」
なつきはまなみを見て、
「このまま住むわ。」
と言った。

「この子達…。」
なつきは少し間を置いて、
「すごい悔しい思いをして来たと思うの…。」
と呟くように言った。

━━彼ら白虎隊の悲話は、現代まで語り継がれている。

「確かに…。」
まなみは納得したように、
「追い出したら可哀想だね。」
と頷いた。

「かたじけない。」
と、悌二郎は頭を下げた。

他の幽霊達も頭を下げた。

「ただし…」
まなみは少し間を置いて、
「私達は、年頃の若い女性なんだから…。」
と、幽霊達を見た。

「……?」
幽霊達は、まなみを見た。

「変な事したら、殺すからね。」
と、念を押した。

━━もう死んでるよ(苦笑)

「もう、亡くなってる子達よ。」
なつきは、まなみを見た。

━━ほら、言われた(苦笑)

「あ、そっか…。」
と、まなみは舌を出した。

それを見た虎之助が、
「え、エモい…。」
と言った。

「!?」
「!?」

なつきとまなみは、顔を見合わせた。

そして、二人は爆笑してしまった。

「ちょっと、あんた、どこでそんな言葉覚えたのよ!」
と、まなみが突っ込んだ。

「前に、住んでいた方達です。」
と、虎之助は答えた。

「面白い子達だね。」
と、まなみは言った。

「うん。」
なつきは頷いた。


そして、二人は幽霊達と共同生活をする事になったのだ…。

二人の美女と、沢山の幽霊…。
奇妙な共同生活の始まりである…。