ようやく夕飯時のレジラッシュが終わり、笑顔でお客さんを見送った。


「どうもありがとうございましたー」


レジ待ちの列が途切れ、ほっと一息ついていると。


「間宮さん、最近表情が明るくなったね。店長もそう言ってたよ」


隣のレジ担当の大学生のお姉さんにそう話しかけられた。


「ほ、本当ですか?」


バイトをしていて、褒められたのは初めて。もちろん嬉しい。

相変わらず忙しい日々を送っているものの、バンドが前に進んでいるせいか前よりも自分が明るくなったように思える。


よし、バイト終わりまであと30分。頑張るぞ。


気合いを入れて再びお仕事に戻った時。

買い物カゴが置かれ、見覚えのある茶髪のボブヘアが視界に入った。


「どもー! お疲れ様ー」

「うわっ、翠さん!」


レジに現れたのはクノさんの彼女、翠さんだった。


「美透ちゃん、バイト何時まで?」

「20時までです」

「もうすぐじゃん。終わったらお話ししようよ」

「あ、はい」


清算したのは、から揚げとお茶のペットボトル。

クノさんがここに現れた時と買っている物は同じ。気が合うんだろうな。

割引きシールは勝手に変えていないけれど。


「じゃあ外で待ってるねー」


翠さんの耳にはたくさんのピアス。

服装はパーカーにショートパンツ。生足がまぶしい。


本当はこの後、ベースを弾きに行く予定だったんだけどな。

翠さんがここにいるってことは、この後クノさんの家に行くのかも。


今日はベースに触れなさそうだな。残念。