土曜日の今日は、バイトは10時から17時まで。

惣菜片手にクノさんの家に行くと、『いる』札が掛けられていた。


ドア越しにギターの音と喋り声が聞こえる。誰かいるのかな。


「おじゃまします」


恐る恐る、ドアを開けた。

中にはギターを弾いてるクノさんと……。


「お、美透ちゃん来た!」


爽やかなイケメン笑顔を向けられ、一瞬ひるむ私。

ジャージ姿のミハラさんもいた。部活帰りかな。


ミハラさんに会釈をしてから、壁際にあるベースのもとへ忍び足で向かう。


「あー気遣わなくていいよ、俺ここで適当に過ごしてるだけだし」


ミハラさんはそう言って、布団に寝っ転がり、スマホをいじり出した。

気まずいながらも、私も部屋の隅に座りベースを鳴らした。


「右手、一定の音で鳴ってない」

「はいっ、意識します!」

「チューニングずれてきた」

「はいっ、直します!」


クノさんは自分でギターをじゃがじゃが弾きながらも、私の音にアドバイスをくれる。

その様子をミハラさんはちらちら横目で見てくる。楽しそうに。


しばらく音を鳴らしていると、クノさんのスマホが震えた。

ギターの音色が止まる。


「あー悪い、これから彼女来るわ」


クノさんは頭をぼりぼりしながら、申し訳なさそうに言った。