四月から真緒が学童に入ることが決まった。

これで母がいない日にも、バイトや練習を入れることができる。


「これ、今月のサッカーチームの会費」


お金を渡すと、母はほっとした表情になった。

ライブの動員が順調なこともあり、バイト代の他にもお金を得ることができていた。


このままいけば、バンドをやっていることがバレても大丈夫かもしれない。

よし、次のライブもたくさん呼ぶぞ。


と気合を入れたものの。


「ごめん、期末の勉強全然進んでなくて」

「お金が……次は絶対行くから」


時期が時期だけに、クラスの友達にことごとく断られてしまう。

翠さんもその日は彼氏と旅行らしく、今回は来れない。

中学時代の友達に声をかけても、あと一人足りない。


ちなみに私たちの目標はクノさんは10人、私と葉山さんは5人ずつお客さんを呼ぶこと。


西町のライブハウスはノルマが15人のため、目標を達成すればチケット代×5人分のお金が手に入る。

最近はお客さんも増えてきたため、バンドにかかる費用も黒字だ。


しかし、今回はピンチ。なんとかしなければ。


「美透ちゃん、今日教室で食べるの?」


昼休みになり、教室内がわいわいし始める。

自分の机にお弁当を置くと、音楽好きの友達が話しかけれくれた。


ふと、教室を出て行った穂波さんの姿がふと目に入る。


彼女は過去がバレたせいで、教室では孤立している状態だ。

最近はどこかで一人お昼を食べているらしい。


「ごめん。今日はちょっと用事があって」


私はあることに気がついていた。

穂波さんはきっと、ある有名なイケメンバンドにハマっている。


声をかけてくれた友達に頭を下げて、私も教室を飛び出した。