ふと目を覚ますと体のあちこちが痛かった。


少し動くだけでも節々が悲鳴を上げる。


顔をしかめ、どうにか上半身を起こして周囲を見回してみた。


そこは見慣れた教室の風景が広がっていた。


前方の黒板には2年A組の日直当番として、クラスメート2名の名前が書かれている。


その名前にも見覚えがあった。


ここは間違いなく、あたしが通っている紫陽花高校の2年A組の教室で間違いなさそうだった。


では、あたしはどうしてこんなところで寝っ転がって、しかも体中が遺体だろうか?


なにか思い出すことはないかと記憶を巡らせてみるけれど。ひどい頭痛がしてなにも思い出すことができなかった。


まるで、誰かに思い出すことを拒まれているような気分だ。


「痛ってぇ……」


教室の後方から男子生徒の声が聞こえてきてハッと息を飲み、振り向いた。


顔をしかめながら立ち上がったのは同じ2年A組の生徒、川本恵一(カワモト ケイイチ)だった。


恵一は大きな体で腰を曲げ伸ばしして周囲を確認している。


とにかく、1人じゃなかったことに少しだけ安堵しながら立ち上がりかける。


その時だった。


「なんだここ?」


「あれ? どうして学校なんかにいるの?」


他の男子生徒や女子生徒の声が聞こえてきて、あたしは動きを止めた。