千夏が額に汗を滲ませて人事課へ行くと、そのまま人事部長に連れられ、なぜか最上階にある副社長室へと連れて行かれた。


(嘘っ…
この会社いきなり副社長が面接するの??
それにしても、副社長って随分若そうじゃん?
まぁ会社自体が、まだ若いみたいだからね…?
確か社長が大学時代に立ち上げた会社って言ってたから、副社長さんも若いんだろけど?
うん? 副社長が若いって事は、社長も同じくらい若いって事じゃない?
もしかして私、社長と恋に落ちたりして…うふふ…)


ニヤける千夏の隣で “コホン!”と人事部部長は咳払いをした。


(ヤバっ…)


すると今迄デスクの書類に目を落として居た副社長は、顔を上げるとひとまわり以上歳上の人事部長へ、申し訳なさそうな顔を見せ
「あ、ごめん。
えっと…君、木ノ下君と知り合いなの?」と千夏に問いかけた。


(えっヤバッ!
若いだけじゃなくて、凄いイケメンじゃん!
これは困ったぞ?
社長はイケメンかどうか分からないけど、
もし、もし二人から言い寄られたら…?
社長とイケメン副社長、どっちを選ぶ?)


面接中だと言うのに、ひとり妄想していた千夏は、副社長の何度かの呼びかけになんとか我にかえる事が出来た。


「小野田さん? どうかしましたか?」

「…い、いえ、木ノ下さんの知り合いの知り合いと言いますか…おじいちゃん先生(あ!)」と答えてしまった。


(うっわぁ、こんな答え方ってないわぁ…
もぅイケメンが面接するの反則だって!
これは落ちる… もぅダメ…諦めよう…
もともと私に向いてない。
おじいちゃん先生ごめん、気持ちに応えられなくてホントごめんね?)


その後も、いきなりの失敗と緊張で、上手く言葉が出ず、あまりにも酷い面接だったと千夏自身思ったが、紹介して貰ったてまえ篠原教授に報告と謝罪をする為、千夏はその足で大学へと向かった。