【Koyomi Side】


ベッドに潜り込んで、耳にイヤフォンをつける。

聴く曲はなんだっていい。

周囲から遮断できれば、それで。



『ごめんね。』


だけどそれも長くは続かなかった。

どんなに大音量で聴いていても、その微かな音に気付いてしまう。


階段を降りると、そこに祖母が立っていた。

今が何時なのか、私が誰なのかも分かっていない祖母が。



『ごめんねぇ。お腹空いたの。』

「もう食べたでしょう?寝る時間だから、お布団戻ろう?」


できるだけ優しく、刺激しないように話しかけて祖母の部屋へ連れていく。

介護用ベッドに寝かせて、ついでにポータブルトイレの掃除をしてから自室へ戻る。


母も弟も起きては来なかった。

ゆっくり寝ていてくれればいいと思いながらもう1度ベッドに入るけれど、なかなか眠りには落ちていけなかった。

また起きてくるかもしれない、そう思うと神経が休まらなくて眠気なんか来ないのだ。