【Seiha Side】


4月。

新しい生徒が入学して、賑やかさと独特の緊張感に校内が包まれる時期がやってくる。

そんな空気も、俺には特に関係のないことだけど。



『新田先生。』

「はい。」


入学式を翌日に控えて準備に追われる職員室で声をかけられたのは、国語教師の竹石(タケイシ)先生だ。

俺の母親くらいの年だと思うが、いつも元気でとにかく明るい先生だ。

生徒と変な関係になるなと余計な世話を焼いてくる教頭とは違って、優しくて接しやすい。



『先生、今年須崎さんのクラスですよね。』

「須崎?」

『去年まで私が担任していた生徒なんですけど、須崎心詠さんって言って。』


須崎 心詠(スザキ コヨミ)。

初めて聞く名前に、慌てて名簿を確認する。

全員覚えたはずだが、まだあやしい生徒もいたか。



「あぁ、そうですね。自分のクラスです。」

『ちょっと、気をつけて見ててあげてほしい子なんです。』


気をつけて?

いやそんな問題児がいるクラス面倒だよって、このときは正直思った。