【Wataru Side】


またカップ麺ですかという竹石先生の言葉と本当だと笑った新田になんとなく居心地の悪さを感じて、職員室から出た。

竹石先生はこんな俺にも優しく接してくれる良い先輩だ。

新田は確か2年程後輩のはずだが、全身から自信が溢れているような雰囲気に可愛がろうという気持ちが起きない。

芸能人が変装でかけるような丸眼鏡がやたらと似合っていることがまた面白くない。


仕方ないから昼食は部室で食べることにする。

正しくは元部室だが。

顧問を務める空手部は近年急成長して、昨年新しく広い部室が与えられた。

それ以来元部室は誰にも使用されることのない空き部屋になっている。

でも俺にとっては汗が滲んだ元部室の方が落ち着くし、なんとなく離れ難い。



「え…?」


鍵の束から新しい部室のものとは違う古ぼけた鍵を選びながら歩いていたからか、元部室の前に来るまでその人影に気付かなかった。

扉の前の段差に、1人の女子生徒が座っていた。