携帯電話のアラーム音で、池上勇吾は気だるさとともに目を覚ました。

アラームを止め、しばし天井を眺める。

あれから1年か……。

ぽっかりとあいた穴に肺いっぱいに空気を吸い込み、吐き出しながら、ベッドから降りた。

階段をおりて、リビングへ向かう。
渇いたのどと空っぽの胃を満たすため、冷蔵庫から牛乳パックを取り出し、口飲みした。

手の甲で、口元をぬぐっていると、玄関がガチャリと音をたてて開く音がした。

「たっらいま~」

毛皮のコートを着た母が、プンプンと酒臭い息を吐きながら、リビングへ入ってくる。

「水水ぅ~、ゆーご、水ちょーだぁい」

子供のように言いながら、母がソファに寝そべった。