◇◇◇

「ちょっと早すぎちゃったかな?」


 日曜日。


 紫音くんとの待ち合わせ場所の、
 噴水広場に来てみたけど……


 何か……

 私だけ場違いな気がする……


 周りはカップルだらけ。


 15分おきに
 噴水ショーが楽しめるこの広場は、 
 手を繋いだり腕を組んだりと、
 羨ましいくらい仲睦まじいのカップル達が、
 所狭しといらっしゃいます。


 なんか私の半径1メートルだけ、
 どんよりオーラが漂っているような。


 私にも彼ができたら、
 ここにいる皆さんみたいに
 虹色のハッピーオーラが出るのかな?


 私に彼なんて、
 一生できないだろうってわかってはいるけど、
 見つめ合って微笑み合うカップルが
 羨ましくて、
 非現実的な妄想をしてしまった。


 帰りたいな……


 そう思っていると、
 遠くから猛スピードで紫音くんが走ってきた。


「六花、遅くなってごめん」


 は~は~言いながら、謝る紫音くん。


「そんな、走ってこなくても良かったのに」


「だってさ、
 遅いと六花が帰っちゃうかもしれないだろ?

 ただでさえ、
 六花が来てくれるか心配だったんだから」


 フフフと声に出して笑ってしまった。


 紫音くん、
 そんなにお兄ちゃんのバイト姿が
 見たいんだね。


 その時。


「俺さ、六花の今みたいに笑った顔、
 結構好きだな」


 な……な……なんですと?


 私の笑った顔……好き?


 紫音くんは、
 何も考えないでサラッと
 言ってくれたと思うけど、
 褒められることなんて
 滅多にない私にとっては、
 ドキっとしちゃうんだから。


 絶対に真っ赤になっている顔を隠したくて、
 両手グーで顔を覆った。