翌朝早くに家を出た。
“学校一緒に行こう”という約束は果たさなかった。
というより、顔見れない。
もう少し頭冷やしたら……アイツの言ういつもの俺になれんのかな。
まだ誰も来ていない教室で自分の席に座る。
勉強しようとしたがやっぱり全然頭に入らねぇ。
何やったって頭にチラつく。
ヒロ……ヒロ……ってアイツの笑顔。
重症だな。
先に行ったこと、今頃怒ってるかな?
でもLINEは来ない。
昨日の最後に言った一言が効いてるのか?
いつもなら怒りのスタンプ連打でくるくせに……
いつも通りで居られないってこと?
ダメだ、何期待してんだろう。
また独りよがりで終わるぞ。
学習したはずなのにテスト勉強と一緒でスルリと抜け落ちていく。
今度こそって踏ん張っても、いつの間にかあの笑顔にコロッと騙されて好きが上書きされてる。
結局どんなに考えて考えても
辿り着く答えは決まってるのか……?
俺、そんなに学習能力ない奴だったっけ?
もういいや。
考えるのよそう。
今はとにかく頭冷やして……
それから…………それから…………
後のことは流れに身を任せて…………
うん…………
今はただ…………………
フワフワと心地良い。
誰かが俺の髪を撫でている。
あぁ、そうか。
おにぎり食ったお皿、引きに来たんだろ?
ちゃんと食べたか確認しに来るだなんて過保護だな。
まぁ、そういうとこ嫌いじゃないけど。
うっすら瞼を開くとぼやけて見える女の影。
やっぱりな………
クスクス笑って「どんな夢見てたの?」って……お前の夢に決まってんだろ。
寝ても覚めても奈那しか浮かんでこねぇよ。
奈那………