入学式が終わり、新入生達は自分のクラスに向かった。
 一時限目。

「担任の相良直人(なおと)だ、宜しく。」

 3組の担任の先生は、奇跡的に僕と名前が一文字違いだった。

「よし、自己紹介の時間だ。…俺から。」

 すると相良…いや、直人先生は教卓のすぐ横に置いてある黒ケースから、何かを取り出す。

「先生は、これが吹けます。さぁ、これは何でしょう。」

 すると、後ろの席に座っていた佐久間くんが言った。

「…Baritone……saxophone?」

 発音が良すぎてもはや聞き取れない。

「そうだ、佐久間。正解だ。これはバリトンサックス。俺はジャズバンド部の顧問だ。」

 そうか、やっぱり部活もあるのか、と思いながら直人先生の話を聞く。

「教科は音楽。合唱コンクールは金賞しか目指しません。宜しく。」

 そう言うと、直人先生は「次、一番」と一番の人に自己紹介を促した。
 怖い先生なのか、気だるいだけの先生なのか……。