目に掛かる前髪を掻き上げて、左に流しピンで止める。
 普通の黒髪だったのを、わざわざブリーチをかけて、そこから銀髪に染めた。確か、アクアシルバーとかいう色。
 黒崎に言われてやった事だった。

「お、相良。やっぱ似合ってんじゃん。」

 噂をすれば何とやら、黒崎が洗面所に来る。ルームシェアにしては小さい洗面器の前で、黒崎は僕の隣にならぶ。

「黒崎も似合ってるよ、茶髪にツーブロック…だっけ?」
「だろ! 結構勇気いるんだよね、コレ。」

 黒崎の情報によると、桜花一高の生徒はほぼヤンキーらしい。しかも男子校。僕の行く様な所じゃない。

「おい、気張れよ? なよってると一発でヤンキーの標的だからな?」

 思わず僕は、無言になる。

「大丈夫、お前はずーっと真顔でいれば良いよ。」
「な、何で…?」
「良い意味で鋭い目してるし。」
「良い意味なんだね……。」