夢のような時間を過ごした、誕生日の翌日。目覚めた私は、ひとり猛烈に思い悩んだ。

満開の桜をのんびりと見て、眼鏡屋で念願叶って生巳さんの黒縁眼鏡姿を拝み、私にはもったいなさすぎるネックレスをプレゼントされて。

リッチなディナーに舌鼓を打ち、マンションに戻ってからも寝るのが惜しくてワインを嗜んだ。

好きな人とこんなに素敵な一日を過ごせるなんて、最高に幸せだった。

もしかしたら眼鏡に恋しているだけなのかもしれない……と怪しんでいた自分の気持ちは、誕生日を迎える前からあっさりと否定できていたから。

眼鏡をかけていても、はずしていても、ちょっぴり意地悪な一面をかいま見ても、心はずっとときめいている。私は桐原生巳というひとりの男性に、確実に惹かれているのだ。

誕生日はそれをさらに実感していたのだが……問題は最後に起こった。

ネックレスをつけてもらい、彼の眼鏡をはずすまではまだ正気でいられた。まあ、恐れ多すぎるミッションに手がぷるぷる震えていたけれど。

その直後、まさか彼に……キ、キスされるなんて!