花莉side



赤点もなく無事に春休みに入ったある日。



隣に座る詩優の袖を引っ張って



「あのね、バイトしたいの」



そう言った私。



内心すごくドキドキ。
前に一度同じことを言って『だめ』と即答されたことがあるから。



また即答されたらどうしよう…

そう不安に思っていたら詩優は私と目を合わせて



「やりたい仕事ってもう決まってたりする?」



と聞いてきた。



「き、決まってない…」

「姉貴と親父が夏休みに花莉がうちで働かないか、って言ってんだけどどうする?
嫌なら断っとくけど」



詩優のまさかの言葉。

朱里さんと、詩優のお父さんから……そんな嬉しい言葉をもらえるなんて…!!



「ぜひっ!!働きたいっ!!働かせてくださいっ!!」



興奮のあまり詩優の腕を引っ張る私。
詩優はそんな私を見て笑いながら、大きな手で頭を撫でてくれた。