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「はーー」
ため息をついているのはアイリスだ。しかし、いつものため息とは少し違った。
最近胸がドキドキして苦しくなることがある。エイミーに相談しても「それは良いことですね」となぜかうれしそうで……。
この間も陛下……アラン様と話をしていたら、幸せすぎて涙が出てしまった。
するとアラン様が鼻にキスをしてくれて……涙を止めるための、いたずらなキスだったけれど子供のように意地悪な顔をするアラン様は、とてもかわいらしくて胸がキュッとなった。
その後も真剣な眼差しで、アランと呼べなんて……。
あの海よりも深い青灰色の瞳に見つめられると、胸が苦しくて呼吸が出来なくなる。
「私……病気なのかしら?」
アイリスがため息をつきながら呟いていると、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。
足音はアイリスの部屋の前で止まるとノック音が響く。
返事をすると息を切らしたエイミーが飛び込んできた。
「大変です!!トロイアの王様と王妃様がいらっしゃいました」
「えっ……」
「今日の夕食時にお会いできるそうですよ!!」
「・・・・」
「良かったですね。さあ、おめかししなくちゃ!!」
久しぶりの親子の対面だと張り切るエイミーだったが、その横でアイリスは青ざめていた。
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アイリスはエイミーに、金色の美しい髪をハーフアップにしてもらい、ドレスはエイミーの一押してある青と紫のグラデーションが美しい布に黒のレースで縁取った物を着ていた。
シックに見えるドレスだが、アイリスが着ると更にアイリスの美しさを引き立たせた。
「キャーー!!アイリス様とても美しいです!!」
アイリスの美しさに歓喜するエイミーだったが、アイリスは浮かない顔だ。
二人は支度が出来たため、夕食が行われる大広間までの廊下を歩いて行くと、大広間の大きな扉
が見えてくる。
その扉の前でアランがアイリスを待っていてくれた。
アランは黒の詰襟の軍服に勲章が沢山付いたものを着ていて、黒く艶のある髪に、青灰色の瞳の美丈夫な顔がアイリスを見つめている。
アランは美しく着飾ったアイリスを見ると、目を見開いていた。
「美しい」
アランにそう言われ嬉しくなるが、背中に冷や汗が流れるのを感じていた。
扉の前まで来ると膝がガクガクと震えだし、指先が冷たくなっていく。
アランは小刻みに震えるアイリスに気づき、顔を覗き込んだ。
「どうした?久しぶりの親子の対面だろう?」
「アラン様……」
震えながらアランにすがるよう、見つめてくるアイリス。
おかしい……どうしたというのだ?
「調子が悪いなら今日は部屋で休むか?」
「大丈夫です。行きます」
意を決した様子のアイリスだったが、足元にいるガイロの様子もおかしい。
足元をうろうろしながら扉に向かってうなり声を上げている。
アランは震えているアイリスを抱きしめた。
「何かあったらすぐに言え、無理はするな。良いな?」
「はい」
アランの言葉に安心し頷くが、不安を取り除くことはできなかった。