SIDE 壱華



2月上旬。東京の気候は凍てつくような寒さに見舞われている。



「うーわ、寒っ。大阪と大違いやん、この寒さはあかん」



車から降りた望月は大きな体を震わせて歯をカチカチ鳴らしている。


今日はこの日のために新調したというスーツを着こなし、極道らしさを倍増させていた。


彼は赤星を入れた側近を2人と、護衛を3人、私を含め7人という少人数で予告通り荒瀬組を訪れた。




わたしはついに、荒瀬組に戻ってきたんだ。


実感がなかったけど、久しぶりにこの立派な門構えを目にすると息が詰まりそうな心地になる。


やっと、やっと志勇に会える。


不安と恐怖と緊張と───沸き上がるその全部を飲み込んで、覚悟を決め、屋敷に足を踏み入れた。