次の日、西に来て3日目。






「壱華、感動やで……!」



部屋に来てなり、手で口を押さえてわざとらしく震えている覇王。


彼の目線は食べかけのお膳にあった。



「食べてくれたんやな。えらいえらい、ええ子や壱華」



生粋の大阪人らしい彼のノリはよく分からない。


冷たい視線を飛ばしていると、彼は近づいてきてゆっくり手を伸ばしてきた。


知らない人の手は怖い。とっさによけた。



「……なんや、頭ポンポンするくらいええやろ」



わたしが拒絶すると、大人しく手をひっこめた彼。


すると手をつけたお膳の前にしゃがみこみ、にこにこしながら箸を取った。


……嫌な予感がする。




「それともアレか、壱華はツンデレなんか。しゃーないなあ。
じゃあ残りは俺が食べさせてやろか?はい、あーん」



誰が、ツンデレって?何が、あーんだ。




「……チッ」



慣れない環境のせいもあって、よっぽどストレスがたまっていたんだと思う。


それと志勇の悪いクセがうつったのか、盛大な舌打ちが部屋の中を静まり返らせる。


きょとんと目を丸くする虎はわたしの豹変ぶりに肝を潰してしまった様子。


自分でも驚いて口を塞いだ。





「……舌打ちはないやろ壱華!俺泣くで!?」



これはさすがに殴られると思ったのに、そうではなくて、余計にやかましくしてしまった。


喜怒哀楽が激しくてついていけない。


狼といい虎といい、どこか人とズレていると思うのはわたしだけだろうか。