SIDE 志勇



「壱華……」



壱華を呼ぶ、自分のかすれた声に意識を取り戻した。


ずいぶん、長い夢にまとわりつかれていた気がする。



「兄貴、気がついたか」



俺はベッドに横になっていた。


傍らには颯馬が座っている。


見たところ病院だろうか。左腕には管が繋げられていた。




「……か、は?」

「は?」

「壱華は?」



意識がはっきりすると、全身が気だるく鈍い痛みに襲われたが、何よりも最優先なことがある。



「……」

「……おい、颯馬」



それは壱華の安否。


しかし、颯馬は一向に口を開こうとしない。


それは何を指す沈黙だ?例えようのない胸の痛みに煽られた。



「……」

「おい!……くっ」



痺れを切らし起き上がるも、左肩と右脚の痛みを呼び覚ましてしまった。


そうだ、俺は撃たれたのか。悔しくもベッドに再び体を沈めた。



「……西だ」

「…………西?」

「西雲会の本拠地にあの子はいる。間違いない」



ああ、恐れていた事態が起きた。俺は寝そべった状態で、深く息を吐いた。


思い浮かんだのは、虎のような目をした、背の高い男。


西の覇王……。