ケータイ小説 野いちご

闇色のシンデレラ

『シンデレラ』
おとぎ話と現実

「この、役立たず!」



真夜中のリビングに響く、ヒステリックな女の声。


同時に放たれる強烈な平手打ち。


痛いのは変わらないけれど、この女に殴られるのは、もう慣れた。



「金額が足りないじゃない。
毎月10万を家に入れるってのは約束でしょ!?
そんなことも出来ないんだから、このグズ!」



癇癪《かんしゃく》を起こしたのは単にかすめ取った金が足りないからではないだろう。


典型的な更年期障害のこの中年の女は、おとぎ話シンデレラで例えるなら、意地悪なまま母に当たる。


血の繋がっていない戸籍上の母親だ。




「ふふっ、いい気味。また傷が増えたねぇ」



すれ違いざまに殴られた頬を見てほくそ笑むのはわがままな妹。


ひとつ年下、高校2年生になる実莉《みのり》は、童顔に華奢《きゃしゃ》な体といった、愛くるしい容姿を武器に、あらゆる人間関係を奪い、わたしをどん底に陥れてきた。


他人の不幸は蜜の味。この家には心配してくれる人間は誰もいない。


目を合わせることにも嫌気が差し、唇を噛んでうつむきながらリビングを出た。

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