#04 未知


「顔かしてよ」

 翌朝、校門で待ち伏せしてアイツを空き教室に誘い出した。

「あのさ。昨日、あんたの先輩とやらがわたしのところに来てーーって。ちょっと」

 当麻氷河は鞄からプリントを取り出した。

「聞いてる?」
「いや」

 聞けよ。

「なにしてるの」
「見ればわかるだろ」

 わかるとも。古文の課題だよね。

 今日の一限。

「またこんなギリギリに?」
「寝落ちした」
「やる気あるのかないのかどっちなの」
「あまりない」
「じゃあやめたら」
「その選択肢はない」

 見ると、少しもシャーペンを持つ手が動いていない。

「数学はスラスラ解いてたのに」
「俺、文系科目は破滅的だから」

 理系か。

「教えてあげてもいいけど?」

 なんてね。

 コイツがわたしに教えを乞うような真似、しないだろう。

「本当か?」

 真顔で問いかけてきやがった。

「……得意ってほどではないよ。人並みにできるくらいで」
「頼む」

 まさか、わたしが、当麻氷河に勉強を教えることになるとは。